概 要

本展に寄せて

今回は古典『孫子』の世界観を、独自の解釈で表現してみました。
『孫子』はクラウゼヴィッツの『戦争論』と並ぶ世界的な兵法書です。曹操や武田信玄をはじめ、多くの先人たちの座右の書とされてきました。現代においては「人生の戦略書」として、様々なビジネスシーンや日常生活において高い評価を受け続けています。

先ず勝ちて而る後に戦う

勝利する軍とは、勝利する態勢を整えてから戦いを始める。一方で、敗北する軍隊とは、先ず戦いを挑んでから勝利を求める。

著者である孫武は、中国の春秋戦国時代に活躍した軍略家です。生きるか死ぬかの弱肉強食の時代にあって、生き延びるためにすべきこと、そもそも「勝つ」とは何か、などを徹底的に追究しました。私は『孫子』を一読し、その綺麗事抜きのリアルな戦術・教訓に大変感銘を受けました。

拙速

まずくとも素早くやること。戦争においては巧久(巧みだが長期戦になること)の事例は見ない。

日頃、風流な詩文が好まれる斯界にあって『孫子』は異色の題材でしょう。しかし『孫子』の現実的で時に人間味ある思想に触れ、生き抜こうというポジティブなエネルギーが湧き上がるのを感じました。今、世界は非常に不安定な状況下にあります。この時代を逞しく柔軟に乗り切るヒントが『孫子』にはあるような気がしてなりません。

九変之利

九変の利

九種類の臨機応変に対処することの利益。

書風は伝統的な古味を生かしつつ、『孫子』らしい囚われない変幻さと計算高さ、さらに一筋縄ではいかない時代の混沌を追求しました。ぜひ本展を一覧されて、感想ノートにご意見などをいただけましたら幸いです。

令和5年9月
佐藤 雄司