概 要
本展に寄せて
今回は中国の古典『墨子』の世界を、独自の解釈で表現しました。
『墨子』はあまり知られた古典ではありません。中国の春秋戦国時代に活躍した諸子百家の一人です。当時は戦乱を生き抜こうと様々な思想が開花しました。そこにあって墨子は「兼愛」を説きました。
兼愛
自分を愛するようように他人を愛する。墨家の根本思想。

「他人を自分や家族と同じように愛せ」というものです。戦乱の最中にあって極めて異色といえるでしょう。また「非攻」を説きました。自ら攻め入ることはせず、小国を助け徹底的に守り抜きました。その無心で鉄壁の防御は「墨守」という言葉を生みました。
賢良の士は此れ固より国家の珍にして社稷の佐なり
賢者は、言うまでもなく国家の宝であり、国家の助けである。

私が小学生の頃、それを反転させた『墨攻』という小説が由来の漫画にハマり、読み耽ったものでした。もちろん、それが本展企画の原点であることは言うまでもありません。
墨守
墨家の堅い守り。転じて、かたく自分の説や態度を守ること。

書風は前回に続き、諸子百家が活躍した時代の古味と、現代的な感覚との融合を目指しました。絶えない戦乱を生き延び、世を正常化させようともがいた先人たちの混沌としたエネルギーを、造形や線に宿そうと試行を繰り返しました。そのエネルギーを、現代の世相と重ねて感じていただけたら幸いです。
令和7年9月
佐藤 雄司
